リモートワークの普及、個の時代の到来、そして人的資本経営への注目。働き方が多様化する一方で、組織内の「孤立」や「分断」が静かに進行しています。私達は、組織からコミュニティの変容が必要だと感じています。今まで言われてきた組織の成立要件であるバーナードの「共通目的」「協働意思」「コミュニケーション」の3つは、コミュニティへと進化させていくことにより、そこには「共通体験」「共通感覚」「共通認識」へと新たな3つの要件が大切になってきます。組織からのコミュニティへとなっていく働きかけ、私たちのマネジメントの在り方自体が変わっていくのです。従来の管理型マネジメントや、機能と効率のみを追求する組織論では、もはや社員のエンゲージメントを高め、イノベーションを生み出すことは難しくなっています。今、組織に必要なのは、管理ではなく「つながり」のデザインです。

本書は、25年以上にわたり1000社以上の組織変革を支援してきた人事・労務のプロフェッショナルチームが提唱する「コミュニティ経営」の実践書です。著者の矢萩大輔氏をはじめとする有限会社人事・労務のメンバーは、組織をピラミッド型の「機能体」としてではなく、人と人との「あいだ(間)」を大切にする「共同体(コミュニティ)」として再定義することを提案します。

数字や効率に追われ、疲弊する現場。離職が止まらない組織。その根本原因は、制度の不備ではなく「関係性の希薄化」にあるかもしれません。本書では、「職場を幸せなコミュニティに変える」ための具体的な思考法とアプローチが、豊富な事例と共に語られています。経営者や人事担当者だけでなく、チームの結束に悩むすべてのリーダーにとって、組織の熱量を取り戻すためのヒントが詰まった一冊です。

【目次】

  • 序章 コミュニティ経営の実現のために
  • 第1章 コミュニティ経営を実現する組織への変革
  • 第2章 生命体としての組織への理解
  • 第3章 「コミュニティ型」組織の人事制度とは
  • 第4章 コミュニティ型組織の評価と賃金
  • 第5章 多様な働き方のルール
  • 第6章 コミュニティ経営のすすめ~お金だけではない”目には見えない価値”を大切にする組織運営とは
    • ・事例1 世界で活躍するものづくり企業(株式会社スワニー)
    • ・事例2 「評価しない」人事制度の構築へ(アミタホールディングス株式会社)
    • ・事例3 一人ひとりが持っている火種にともしびを当てる(湯河原リトリート ご縁の杜)
    • ・事例4 協同労働で広がる”働く豊かさ”の可能性(労働者協同組合連合会)

本書から学べる3つの核心

  • 1「機能」ではなく「あいだ」をマネジメントする

    従来の組織論は、役割やタスクといった「機能」に焦点を当ててきました。しかし、本書は個と個の「あいだ(関係性)」にこそ、組織のエネルギーが宿ると説きます。「上司と部下」「会社と社員」という二項対立を超え、その間にある信頼関係や空気感をいかにデザインするか。目に見えない「関係性の質」を高めることが、結果として「結果の質」につながるメカニズムを解き明かします。

  • 2「管理」から「自律」へのOSアップデート

    「コミュニティ経営」とは、単なる仲良しクラブを作ることではありません。それは、トップダウンの管理型組織から、一人ひとりが主体的に動く自律分散型組織への転換を意味します。本書では、社員が「やらされ仕事」ではなく、自らの意志で貢献したくなる「場」のつくり方や、心理的安全性の高い土壌の耕し方を具体的に提示します。

  • 3「制度」よりも「対話」を重視する組織づくり

    どんなに立派な人事制度を作っても、運用されなければ意味がありません。本書が強調するのは、制度設計以前の「対話」の重要性です。評価やルールの背後にある「おもい」を共有し、対話を通じて納得解を導き出すプロセスこそが、コミュニティの紐帯を強くします。効率化の中で切り捨てられがちな「無駄に見える対話」こそが、実は最強の組織戦略であることに気づかせてくれます。

経営者・人事責任者の皆様へ:本書がもたらす3つの経営変革

  • 1採用難・離職対策としての「選ばれる組織」への進化

    給与や条件だけでは人材を繋ぎ止められない時代です。本書の実践を通じて、「この仲間と共に働きたい」「この会社が好きだ」という情緒的な結びつき(エンゲージメント)を醸成することで、人材流出を防ぎ、採用においても強力なブランド力を持つ「求心力のある組織」へと変革することができます。

  • 2人的資本経営の要となる「ウェルビーイング」の実現

    社員の幸福(ウェルビーイング)は、もはや福利厚生の一部ではなく経営戦略の中心です。「幸福感の高い社員は生産性が高い」という科学的事実に基づき、社員が精神的に満たされ、生き生きと働ける環境(コミュニティ)を構築することで、持続可能な高いパフォーマンスを引き出す基盤を作ります。

  • 3変化に強い「レジリエンス(回復力)」の高い組織体質

    危機に直面した時、マニュアルだけの組織は脆く崩れ去りますが、強い信頼関係で結ばれたコミュニティは互いに支え合い、乗り越える力を発揮します。「あいだ」のある組織を作ることは、不確実な時代において最も確実なリスクマネジメントであり、企業の永続性を高めるための本質的な投資となります。

現場リーダーの皆様へ:本書がもたらす3つの現場変革

  • 1「孤独なリーダー」からの解放

    「自分がすべて決めなければならない」という重圧から解放されましょう。コミュニティ型チームでは、リーダーは「支配者」ではなく「調整役(ファシリテーター)」となります。メンバーの強みを引き出し、相互に補完し合う関係を作ることで、チーム全体で課題を解決する機動的な体制が生まれます。

  • 2心理的安全性が生む「自発的な提案」の増加

    「何を言っても否定されない」という安心感(心理的安全性)が、現場のアイデアを活性化させます。本書の手法を取り入れることで、指示待ちだったメンバーが自ら考え、改善を提案するようになり、チームのイノベーションが加速します。

  • 3多様性を力に変える「包摂的」なコミュニティシップ

    時短勤務、リモートワーク、副業など、働き方がバラバラなメンバーをどう束ねるか。コミュニティ経営の視点は、その「違い」を分断の要因ではなく、多様な価値観として包摂する知恵を与えてくれます。互いの背景(あいだ)を知り、尊重し合う文化を作ることで、多様なメンバーが一体感を持って働ける強いチームを実現します。