私たちの生活を支えている株式会社や銀行、学校などの仕組みは、だいたい150年前の明治時代に作られたものです。当時は新しくて便利だったこれらの仕組みも、今では時代の変化に追いつかなくなっています。ルールも前例もない中で、新しい仕組みをゼロから作らなければならない局面は、今のビジネスの現場でもよく起こります。
答えがどこにも載っていない問題にぶつかったとき、頼りになるのが「知識・見識・胆識(たんしき)」という3つの力です。本を読んで勉強する「知識」や、自分の経験から判断する「見識」を持っている人はたくさんいます。しかし、周囲の反対やトラブルがあっても、自分で責任を引き受けて行動に移す「胆識」を持つ人は、そう簡単にはいません。
この本は、明治時代に日本のビジネスの土台を作った人たちが、目の前のピンチをどうやって切り抜けたのかを、具体的なエピソードとともに紹介しています。著者の守屋淳氏は、渋沢栄一の『論語と算盤』を現代向けに分かりやすく訳したことで知られる作家です。歴史の教科書のような堅苦しい内容ではなく、今の仕事や組織づくりにそのまま使える知恵が散りばめられています。
【目次】
- まえがき
- 第一章 「近代」という鞭をあてられた日本
- 第二章 実業という果実に、人々を巻き込むために ――渋沢栄一①
- 第三章 人々からの「期待」が「信用」に変わるとき ――渋沢栄一②
- 第四章 小判を描いた扇子に頭をさげよ ――岩崎弥太郎①
- 第五章 ライバルを倒し続けた勝者が観た景色 ――岩崎弥太郎②
- 第六章 やがてなりたき男一匹 ――大倉喜八郎①
- 第七章 罪のない糠味噌を腐らせる ――大倉喜八郎②
- 第八章 「克己力」のバケモノ ――安田善次郎①
- 第九章 六七十は鼻たれ小僧、働き盛りは八十から ――安田善次郎②
- 第十章 共鳴し合う「誠実さ」 ――森村市左衛門①
- 第十一章 儲けんと思わば、天に貸せ ――森村市左衛門②
- 第十二章 託された近代化の夢 ――小栗上野介と三野村利左衛門①
- 第十三章 陽気な改革者 ――三野村利左衛門②
- 第十四章 命に逆らいて君を利す、これを忠という ――広瀬宰平
- 第十五章 事業の進歩発達に最も害するもの ――伊庭貞剛
- あとがき 跋にかえて――彼らが、現代に示唆するもの
本書から学べる3つの核心
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今の仕組みが作られた理由をたどる
私たちが普段使っている銀行や会社、教育という仕組みが、そもそもどうして生まれたのかを知ることは、今の課題を整理するのに役立ちます。仕組みが作られた当時の考え方に立ち戻ることで、「二周目の明治」と呼ばれる今の転換期に、何を変えればいいのかが少しずつ見えてきます。
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「言うだけの人」から「やる人」になる
情報が多い今の時代、アドバイスや意見を口にするだけの人はたくさんいます。しかし、実際に自分で泥をかぶって動く人はほとんどいません。渋沢栄一や岩崎弥太郎といった人たちの生々しい行動を見ていくと、自分で責任を取って最後までやり抜く姿勢がどれだけ大切かが分かります。
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組織がつぶれないための「引き際」を考える
どんなに素晴らしい会社でも、上の人たちがいつまでも同じ場所に居座り続けると、新しい芽が育たなくなります。大倉喜八郎の失敗談や、伊庭貞剛の「仕事が進むのを一番邪魔するのは、若い人の失敗ではなく、お年寄りが威張り続けることだ」という言葉は、古い考えにこだわらずに若手へ権限を委譲していく大切さを教えてくれます。
現場で活かせる3つの考え方
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全体のためになるなら、自分の頭で考えて動く
「指示だから」「前例がないから」と諦めてしまうのは簡単です。しかし、現場の状況を一番知っているのは現場の人たち。別子銅山を守り抜いた広瀬宰平のように、本当に会社や地域のためになるなら、ときにはマニュアルに縛られず、現場の判断で一歩踏み込んで動くことが良い結果につながります。
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「小さな約束」の積み重ねが、大きな信用を作る
「克己力のバケモノ」と称された安田善次郎は、誰も見ていないところでも手を抜かず、決めたルールや小さな約束を当たり前に守り続けました。地道な自己管理の積み重ねこそが、チームや取引先からの揺るぎない信用を作っていきます。
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変革の時期だからこそ、明るさが必要
三井の中興の祖である三野村利左衛門は、江戸時代からの豪商のほとんどが潰れていった激動の明治初期に、その陽性なキャラクターを生かして三井を改革していきました。激動の時代だからこそ、明るさや陽気さは強い武器になるのです。
信頼を築く3つの姿勢
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「儲け」の先にある社会とのつながり
ビジネスは自分たちだけが儲かればいいというものではありません。渋沢栄一が目指した社会全体を豊かにする「合本」の仕組みや、森村市左衛門の「儲けんと思わば、天に貸せ」という言葉。これらは、目先の利益だけでなく、世の中の役に立つことで関係が長続きするという、商売の基本となる温かい考え方に気づかせてくれます。
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自分を律して「小さな約束」を守り続ける
安田善次郎が貫いたのは、自分を厳しくコントロールする姿勢でした。誰も見ていないところでも手を抜かず、決めたルールや締め切り、小さな約束を当たり前に守り続ける。地道な自己管理の積み重ねこそが、やがて周りからの「この人なら大丈夫」という揺るぎない信用を作っていきます。
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相手からの期待を「信用」に変える
渋沢栄一は「人々からの期待を信用に変える」ことを大切に考えていました。ただ目の前の相手に気に入られるだけでなく、地道に約束を守り、結果を積み上げていく。相手の期待にまっすぐ応えていく誠実さが、揺るぎない長期の取引関係を築くための太い柱になります。