グローバルなビジネスの舞台で、専門知識やスキルは「あって当たり前」の時代になりました。では、本当の差はどこでつくのでしょうか? それは、自国の文化をちゃんと理解していて、それを自分の言葉で伝えられる「センス」や「深み」です。特に海外の方との大切な交渉の場で、自国の文化を語れないと「あれ?」っと思われてしまい、信頼関係を築く上で少し不利になってしまうかもしれません。

本書は、その「見えざる武器」を手に入れるための、とても実践的なガイドブックです。500年の歴史を持つ日本の伝統文化の粋である「茶道」を、単なる趣味や作法としてだけでなく、ビジネスや人生を豊かにする「知恵」として、もう一度見つめ直します。本書が教えてくれるのは、知識の小難しいカケラではありません。それは、文化に対するちょっとした不安を、世界で通用する自信と影響力に変えてくれる「考え方」です。

本書の一番大切なポイントは、茶道の精神が「素敵なビジネスや人生を送るためのヒント」をたくさんくれる、という点です。この本を読めば、あなたの考え方を「文化について聞かれたらどうしよう…」という守りの姿勢から、「私の国の文化が持つ、この深い考えをシェアしよう!」という積極的な姿勢へと、ガラッと変えることができるでしょう。自分の持つ文化的な背景を、世界で信頼を勝ちとるための素敵な武器に変える、そのための本です。

【目次】

  • 第1章 外国人が知りたい日本の文化・世界が憧れる日本のおもてなし
  • 第2章 なぜエリートは茶道の虜になるのか
  • 第3章 これだけは知っておきたい日本の伝統文化「茶道」
  • 第4章 ビジネスや日常に活かしたい千利休の七つの教え(利休七則)
  • 第5章 知っていると一目置かれる、日本人としての品格
  • 第6章 知っていると自信が持てるお茶会の作法 楽しむ為の知識

本書から学べる3つの核心

  • 1「おもてなし」が育む、誰にも真似できないお客様との絆

    茶道における「おもてなし」は、単なる顧客サービスとはひと味もふた味も違います。それは、相手が何を求めているかを察し、見返りを求めず、完璧な時間と空間を創り出す、心をこめた芸術のようなもの。この哲学は、現代ビジネスでよく言われる顧客体験(CX)や、ブランドへの愛着を育てることにそのまま活かすことができます。本書は、茶道の細やかな心配りが、どうやってライバルには真似できない、深くて、長く続くお客様との関係を築くのかを具体的に教えてくれます。

  • 2「わび・さび」に学ぶ、大切なことを見抜くシンプルな考え方

    足りないことや、移ろいゆくものの中に美しさを見つける「わび・さび」。この考え方は、ビジネスにおける「余計なものをそぎ落とす」という考え方に通じます。本書はこの日本ならではの感覚を、誰にでも分かりやすく解説します。この考え方を身につけると、リーダーはたくさんの情報の中から「本当に大切なこと」を見抜き、無駄を思いきりカットして、事業や製品の「一番大事な価値」に力を集中することができます。これは、スティーブ・ジョブズのような人たちの成功にもつながる、すぐにでも役立つ深い知恵です。

  • 3「和敬清寂」—チームとリーダーを強くする「心の持ち方」

    茶道の基本である「和敬清寂」(なごやかさ、お互いへの敬意、清らかさ、動じない心)は、個人やチームがどうあるべきかを示す、素晴らしいお手本になる考え方です。本書は、この4つの心が、今の組織が抱える悩みをどう解決するかのヒントをくれます。「和」と「敬」は、誰もが安心して発言できる風通しの良いチームを育て、「清」はウソのないクリーンな姿勢を促します。そして「寂」は、先が読めない時代でもリーダーがブレない、強い心を作ってくれます。

経営者・経営企画の皆様へ:本書がもたらす3つの経営変革

  • 1先が読めない時代を乗りこなす「先読みのチカラ」

    今の経営は、過去のデータ分析だけでは未来を読むのは難しいですよね。本書が紹介する茶道の精神は、未来のサインをキャッチするための新しいヒントをくれます。「寂」の動じない心や、「わび・さび」の本質を見抜く考え方を経営に取り入れることで、ライバルが後追いで対応するような市場の変化を先読みし、賢く次の一手を打つことができます。これは、守りのリスク管理から、未来を自分たちで創っていく経営への大きなステップアップにつながります。

  • 2ピンチに強い「しなやかな組織」をつくる

    「和敬清寂」のルールは、精神論ではなく、会社の土台を強くするための、すぐに役立つ考え方です。組織の弱点を日頃から見つけておき、誠実な判断と透明性を大切にすることで、いざという時に大きなダメージになりかねない弱点をあらかじめカバーし、組織全体の「しなやかで折れない強さ(レジリエンス)」をグッと高めます。これは、その場しのぎの対応ではなく、会社の未来にとって大切な投資です。

  • 3ライバルが真似できない「本当の強み」を持つ

    製品やサービスの良さは、いつか真似されてしまいます。でも、「おもてなし」の心から生まれる最高のお客様との時間は、簡単には真似できない、本物の財産です。本書が説く哲学は、価格や機能の競争ではなく、「どれだけ信頼されているか」という土俵で勝負することを可能にします。これにより、他とは違う、圧倒的な強みを持ち、長く愛され続ける会社になることができます。

事業部長・現場リーダーの皆様へ:本書がもたらす3つの現場変革

  • 1チームの壁をなくす「みんなの共通言語」を持つ

    「隣のチームが何をしてるか分からない…」そんなタテ割りの組織は、悩みのタネですよね。「和敬清寂」の心、特に「和」と「敬」は、この問題を解決するとても役に立つ道具になります。チーム全員がこの価値観を共有すれば、それが「みんなが同じ方向を向くためのコンパス」になり、部門の壁を越えた本当に意味のあるチームワークが現場で生まれます。

  • 2チームが育つ「もう一段上の考える力」を伸ばす

    チームのメンバーに、ただの作業者から、自分で考えて動ける人へと成長してほしいリーダーにとって、本書はぴったりの教科書です。「わび・さび」の本質を見抜く考え方や、「利休七則」が教える「準備の大切さ」をチームに浸透させることで、チーム全体の考える力や先を読む力が自然とレベルアップし、ワンランク上の仕事ができる組織に変わっていきます。

  • 3「なるほど!」と言わせる、説得力のある企画の立て方

    新しいプロジェクトや予算を通す時、その必要性をうまく説明するのは、現場リーダーとしてとても大切なスキルですよね。茶道が大切にする「徹底した準備」と「相手への心配り」の精神は、そのためのとても心強い武器になります。これらを活かせば、単なる思いつきではない、データと論理に裏打ちされた「なるほど、それならやろう!」と納得してもらえる企画書ができあがり、上司や経営層のOKをもらいやすくなります。



2025年10月『世界のビジネスエリートが知っている 教養としての茶道』が加筆・再編集を経て文庫化。 『日本人なら知っておきたい 教養としての茶道』として、三笠書房「知的生き方文庫」より発売となりました。今回の文庫化は、単に小さくするのではなく、茶道を通して日本文化の魅力や生き方のヒントを、よりやさしくお伝えできるよう、丁寧に磨き直されています。ぜひこちらもお手に取ってご覧くさださい。