地政学リスクの深刻化、急速なデジタル転換、高精度な予測が難しい市場変動。現代のリーダーやマネージャーは、組織の持続性や人の意欲をどう支えるかという課題に向き合っています。短期的な数値だけにとらわれない判断軸が求められるいま、過去の実践に学び直すことには大きな意味があります。

本書は、一般に「薪を背負って本を読む銅像」のイメージから、道徳家・勉強家として語られがちな二宮尊徳(金次郎)の功績と生涯を、漫画と解説で捉え直す一冊です。版元紹介でも、尊徳は「江戸時代最高のコンサルタント」とも言うべき人物として位置づけられており、およそ600の村々の立て直しに携わった実践家として描かれています。本書は、その知恵を現代にも通じる示唆として読み解けるように編まれています。

本書の中核にあるのは、至誠・勤労・分度・推譲を軸とする報徳の考え方です。なかでも、収入の範囲を見極める「分度」と、そこから生まれた余剰を将来や社会のために回す「推譲」は、短期的な数字合わせではなく、持続的な再建と成長を支える視点として読むことができます。さらに本書は、躍動感のある漫画、時代背景まで押さえた解説、そして弟子たちの聞き書きをベースにした語録で構成され、珠玉の二宮尊徳語録50も収録しています。

【目次】

  • 第1章 二宮尊徳 幼少期
  • 第2章 二宮尊徳 青年期
  • 第3章 二宮尊徳 壮年期【前編】
  • 第4章 二宮尊徳 壮年期【後編】
  • 第5章 二宮尊徳 晩年期

本書から学べる3つの核心

  • 1「分度」と「推譲」が織りなす健全な循環

    尊徳の再建思想の要となるのが、収入に応じた基準を定め、その範囲内で営む「分度(ぶんど)」と、そこから生まれた余剰を将来や社会のために生かす「推譲(すいじょう)」です。本書では、この二つを単なる節約論としてではなく、持続的な再建を支える実践知として学べます。現代の組織運営に引き寄せれば、無理のない収支管理と、未来に向けた備えや投資の両立を考える契機となります。

  • 2「一円融合」と「万象具徳」に学ぶ、人と組織の見方

    「万象具徳(ばんしょうぐとく)」は、あらゆるものにそれぞれの徳があるという考えです。「一円融合(いちえんゆうごう)」は、さまざまな要素が互いに働き合い、一つの結果を生むという教えです。本書では、尊徳が疲弊した村の人々の力を見出し、関係をつなぎ直しながら再建を進めた姿が描かれます。現代の職場に置き換えて読めば、一人ひとりの強みを見つけ、役割を生かし合う組織づくりへの示唆として受け取れます。

  • 3「漫画×解説×語録」で立体的に学べる構成

    歴史的人物の思想は、難解なままだと実践につながりにくいものです。本書は、困難な状況を切り開く尊徳の生涯をたどる「漫画」、時代背景や関わった人々を補う「解説」、そして本書で読みやすく整理された「語録」という三層で構成されています。人物像・思想・言葉を往復しながら読めるため、尊徳を初めて学ぶ読者にも入りやすい一冊です。

経営者・経営企画の皆様へ:本書を経営に引き寄せて読む3つの視点

  • 1逆境に備えるための「分度」の視点

    地政学リスクや原材料高騰など、先行きが読みづらい時代こそ、収入に見合った基準を定める「分度」の考え方は示唆的です。本書に描かれる尊徳の実践は、拡大一辺倒ではなく、無理のない経営の土台をどう築くかを考える材料になります。余剰を将来への備えや次の手立てに回す視点は、平時からの耐久力を高めるための確実な布石となります。

  • 2道徳と経済を切り離さない発想

    尊徳思想の特色は、道徳と経済を対立させず、両立の中で社会や暮らしを立て直そうとする点にあります。本書でも、誠実さを土台にしながら生業を立て直していく視点が通底しています。社会との関係を保ちながら成果を上げるとはどういうことかを考えるうえで、短期的な収益だけでは測れない経営の軸を与えてくれる一冊です。

  • 3一人ひとりの持ち味を生かす組織づくり

    「万象具徳」の発想は、人や物事の中にある長所や可能性を見出すことの大切さを示しています。本書では、疲弊した村の人々を一方的に統制するのではなく、それぞれの力を生かしながら再建を進める尊徳の姿が描かれます。現代の組織に置き換えれば、受け身にさせない関わり方や、各人の役割を活かすチームづくりのヒントとして読めます。

事業部長・現場リーダーの皆様へ:本書を現場に引き寄せて読む3つの視点

  • 1「積小為大」に学ぶ、日々の改善の積み重ね

    本書が繰り返し伝えるのは、小さな努力を積み重ねることの重みです。大きな成果も、日々の気づきや工夫の集積から生まれます。「積小為大」の考え方は、現場で起きる小さな改善を軽視せず、継続して積み上げる姿勢を共有するうえで有効です。メンバーの小さな前進を見逃さず評価することの大切さを、具体的に考えるきっかけになります。

  • 2困難を学びに変える視点

    本書の語録やエピソードからは、困難を単なる不運で終わらせず、学びや鍛錬の契機として受け止める姿勢が伝わってきます。問題が起きたときに萎縮するのではなく、何を立て直すべきかを考える視点は、現場の落ち着きやチームの粘り強さを支える原動力となります。

  • 3仕事の意味を言葉にする力

    本書の語録には、結果だけでなく、そこに至る働き方や稼ぎ方にも価値があるという発想が見られます。数字だけでは伝わりにくい仕事の意味を、リーダー自身の言葉で共有する大切さを考えさせてくれます。目標の背景や目的を丁寧に示すことで、メンバーの納得感や協力を引き出すヒントにもなるでしょう。