長引くインフレ、急激な円安、そして世界的な保護主義の台頭。現代の日本経済を覆う不確実性の霧は、かつてないほど濃くなっています。しかし、これらの危機は決して未知のものではありません。昭和という激動の時代において、日本人はこれらと同様、あるいはそれ以上の試練に直面し、それを乗り越えてきました。
本書『経済で読み解く昭和史』は、日本経済新聞の記者として高度成長からバブル崩壊までを最前線で取材した岡田晃氏による、渾身の「実用経済史」です。著者は、昭和の100年間を単なる歴史の回顧録としてではなく、現代の危機を突破するための「生きたケーススタディ」として再定義します。
なぜ昭和の日本人は、敗戦の焦土からわずか数十年で世界第2位の経済大国へと駆け上がることができたのか。その「強さ」の構造的要因と、バブル崩壊に至る「失敗」のメカニズム。これらを経済学的視座から精緻に分析した本書は、失われた30年を経て、再び世界での立ち位置を模索する令和の日本にとって、未来を切り拓くための不可欠な羅針盤となる一冊です。
【目次】
- 序章 激動の昭和から学ぶ
- 第一章 恐慌で始まった昭和
- 第二章 戦争の時代
- 第三章 戦後復興―「奇跡の復活」
- 第四章 高度経済成長―元気だったあの頃
- 第五章 高度成長の終焉―試練の時代
- 第六章 バブルへの道
- 終章 令和の日本経済復活に向けて
本書から学べる3つの核心
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「歴史は韻を踏む」:現代のインフレ・分断との類似性
「歴史は繰り返さないが、韻を踏む」。本書はこの格言を地で行く内容です。現代日本を苦しめる「狂乱物価(インフレ)」や「ブロック経済化」は、実は昭和初期に起きた事象と驚くほど構造が似ています。本書を通じて過去のメカニズムを深く理解することで、私たちは現在進行形のニュースの背後にある「因果関係」を読み解き、この先に待ち受けるシナリオを予測する力を養うことができます。
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「経済安全保障」の原点:関税合戦が招いた悲劇
著者は、第二次世界大戦の真因を政治やイデオロギーだけでなく、「スムート・ホーリー法」に代表される保護主義的な関税競争に求めます。自国第一主義に基づく経済的な分断が、いかにして国家を追い詰め、安全保障上の破局(戦争)へと直結していくか。米中対立やサプライチェーン分断が進む現代において、この歴史的事実はあまりにも重い警告として響きます。
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「レジリエンス(回復力)」の源泉:危機を成長に変える構造
敗戦という絶望的な状況や、オイルショックという供給ショックに対し、昭和の日本企業はいかにして立ち向かったのか。本書が解き明かすのは、精神論ではない構造的な「強さ」です。官民がベクトルを合わせた産業政策、不況期にこそ行われた徹底的な合理化と技術革新。これらの「ピンチをチャンスに変える構造的メカニズム」を知ることは、閉塞感漂う現代日本のビジネスパーソンに強い勇気と具体的なヒントを与えます。
経営者・経営企画の皆様へ:本書がもたらす3つの経営変革
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地政学リスクを経営戦略に組み込む「鳥の目」
昭和史における「ブロック経済化」の失敗は、グローバル・サプライチェーンの見直しを迫られる現代経営への最大の教訓です。本書を読み解くことで、短期的なコスト最適化だけでなく、地政学的な分断リスクを前提とした「生き残るための強靭な事業構造」を設計するための、長期的かつ俯瞰的な視座を獲得できます。
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バブルと恐慌の予兆を察知する「炭鉱のカナリア」
片岡蔵相の失言による金融恐慌や、プラザ合意後の過剰流動性が招いたバブル経済。政策決定の遅れや誤りが市場にどのようなインパクトを与えるか、その因果関係を学ぶことは極めて実践的です。これにより、政府・日銀の政策変更や市場の微細な変調から、次の危機の予兆を早期に察知する感度を飛躍的に高めることができます。
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「成長と分配」の好循環を生むリーダーシップ
池田勇人内閣の「国民所得倍増計画」は、政治が明確なビジョンを示すことで国民(従業員)の期待成長率を高め、投資と消費の好循環を生み出した成功例です。停滞する組織において、いかにして未来への希望を提示し、組織全体のマインドセットを「縮小均衡」から「成長志向」へと転換させるか。そのリーダーシップの要諦を歴史から学ぶことができます。
事業部長・現場リーダーの皆様へ:本書がもたらす3つの現場変革
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ピンチをイノベーションに変える「転換力」
オイルショックによるエネルギー価格高騰は、日本経済にとって大打撃でした。しかし、現場のリーダーたちはこれを「省エネ技術開発の好機」と捉え、後の自動車・家電産業の世界的躍進につなげました。本書は、逆境や外圧を単なるコスト増要因として嘆くのではなく、新たな競争優位を築くためのトリガーとして活用する「転換力」を養います。
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現場の納得感を生む「歴史という共通言語」
DXや構造改革など、痛みを伴う変革を現場に浸透させるのは容易ではありません。しかし、「ドッジ・ライン」や「産業構造の転換」といった歴史的成功事例を共通言語として用いることで、「なぜ今、変わらなければならないのか」という問いに対し、説得力のあるストーリーテリングが可能になります。歴史は、人を動かす最強の武器です。
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不況期こそが飛躍の好機という「逆転の発想」
「元気だった昭和」においても、不況は存在しました。しかし、当時の日本企業は不況期を「次の飛躍のための準備期間」と捉え、設備投資や人材育成を緩めませんでした。本書からそのタフネスを学ぶことで、目先の数字に一喜一憂せず、不況の波を乗りこなしながら着実に実力を蓄える、足腰の強いチームビルディングが可能になります。