「日本の奇跡」と言われる明治の産業革命の礎は、幕末のサムライたちによって準備されていた。製鉄、造船、石炭産業の現場では、藩の垣根を超えて技術を共有し、奮闘する人々の熱いドラマがあった!
例えば、製鉄のもととなった伊豆の反射炉の技術は、佐賀藩と伊豆の代官・江川英龍が協力して研究が始まり、佐賀から薩摩へ、さらに水戸藩を経由し、最終的には釜石の洋式高炉に結実した。それが明治時代に官営釜石製鉄所や官営八幡製鉄所へとさらなる発展を遂げ、現在の新日鉄住金に至る。
造船に関しては、島津斉彬の命を受けて幕府の長崎海軍伝習所で学んだ薩摩藩士・五大友厚は、トーマス・グラバーらと共に長崎の小菅修船場を建設した。これが現在の三菱重工長崎造船所につながっていく。岩崎弥太郎、弥之助、久弥の3代に渡る三菱重工業の社長たちの事業拡大の歴史とも重なる。
“軍艦島“で知られる石炭産業の発展においては、福岡藩士だった團琢磨の働きがめざましく、彼の見識と技術導入へのアイデア、決断力が、石炭産業の多大な発展を促した。

幕末から明治の激動の時代に、政治の争いとは無関係に、日本の未来を考えて奔走した若きサムライたちや現場の無名の職人たちの、ひたむきさやチャレンジ精神を感じる熱い一冊です。

●現在の「明治日本の産業革命遺産」を撮影したカラー口絵のほか、本文中にも昔の貴重な写真や資料が満載! 是非、保存版にしたい1冊です。

【目次】
はじめに ――明治一五〇年が教える“日本の底力”――

第一章 “西郷どん”や“五代様”を育てた薩摩藩・島津斉彬の挑戦
――ピンチをチャンスに変えたリーダー――

第二章 志士の息吹を今に伝える長州・萩
――吉田松陰から伊藤博文へ――

第三章 実は近代化のトップランナーだった佐賀
――「地方創生」の先駆け――

第四章 知られざる“近代化の父”・江川英龍
――改革に命を捧げた伊豆の代官――

第五章 “陰のプロデューサー”トーマス・グラバー
――”近代化特区”となった長崎――

第六章 長崎から世界へ
――造船大国ニッポンの船出――

第七章 反射炉から釜石、そして八幡へ
――産業革命の主役・「鉄」――

第八章 産業革命のエネルギーを支えた石炭産業
――育ての親・團琢磨――

おわりに ――日本経済再生に向けて――
つながる二三の遺産――地域を超えた技術伝播――
日本経済再生へ三つのヒント